友人のシニア・ソムリエさんと南アフリカのワイナリーを訪れたとき、
「ワインづくりは、土が生命線なんだ。水はけの良い土があることが重要だ」と。
ブドウだけでなく美味しい野菜を育てるには、土を知るところから始めるといい、ということがわかりました。
土によって、通気性のある土、保水性のある土、排水性のある土など、違いがあります。栽培する野菜や果物に合わせて、ちょうどいい土を選んでいきます。
良い土とは
良い土の条件があります。水はけが良い。水もちが良い。堆肥のような有機物を多く含んでいる土です。
土にはいろいろなタイプがあります。粘土を多く含んだ重い土があります。砂のようにサラサラした軽い土があります。農業に適した土というのは、重くもなく、軽くもなく、その中間に当たる土になります。
良い土の条件とは
良い土の条件は、以下の7つのポイントを満たした土になります。
1.根が十分に張れる
2.通気性と排水性が良い
3.保水性・保肥性にすぐれている
4.適正な酸度である
5.清潔である
6.異物が混ざっていない
7.微生物が多く含まれる
野菜づくりに必要な土の養分
野菜づくりに必要な土の養分があります。以下、まとめました。
5つの養分(多量要素)
窒素
リン酸
カリウム
カルシウム
マグネシウム
8つの養分(微量要素)
イオウ
ホウ素
鉄
モリブデン
マンガン
亜鉛
銅
塩素
野菜づくりに必要な土のpH
野菜の種類ごとに、生育に好ましいpHが違います。適正なpHの土づくりを行うことが大切です。
pH(ペーハー)
酸・アルカリの強さは、pH(ペーハー)で表します。
pH 7を中心に値が小さくなるほど、酸性が強くなります。
pH 7を中心に値が大きくなるほど、アルカリ性が強くなります。
酸度を調整する
野菜の種類ごとに酸度を調整しなければなりません。
酸性土壌を中和する場合
1㎡の面積を10cmの深さまで耕すとき、消石灰を80~100g施すと、酸度が1上がります。
苦土石灰・有機石灰を100~150gを施すと、酸度が1上がります。
土の深さを20cmにすると、当然、2倍の量が必要になります。
石灰質肥料は、なるべく早く土と混ぜます。雨が降ると、石灰が固まってしまうので、注意してください。
アルカリ性の土壌を中和する場合
鶏ふんを長年繰り返し使っていると、次第にアルカリ性に傾いてきます。
アルカリ性になった土には、鹿沼土の細粒かピートモスを混ぜます。
農作物別のpHの好適生育範囲
pH 6.5 ー 7.0 ほうれん草
pH 6.0 ー 7.0 大根、えんどう豆、アスパラガス、キャベツ、トマト
pH 6.0 ー 6.5 里芋、枝豆、ブロッコリー、かぼちゃ、きゅうり、ネギ、すいか、なす
pH 5.5 ー 6.5 かぶ、玉ねぎ、にんじん、いちご
pH 5.5 ー 6.0 さつまいも
pH 5.0 ー 6.5 じゃがいも
有機物を混ぜ込む(団粒化)
安定して品質の良い野菜を収穫するには、十分な有機物を土に混ぜ込む必要があります。有機物に含まれる微生物のはたらきで、細かい土粒同士が結びつきます。これを団粒化と言います。
微生物によってネバネバした土は団粒化し、土の粒々のすき間が多くなって、通気性、排水性がよくなります。農作物の根にとって、環境がよくなります。
ただし、土粒が細かすぎると、雨が降ったときに水はけが悪くなり、土中の空気の入りが少なくなるので、注意してください。
また、化成肥料や配合肥料を施すことで、短期間で野菜を収穫できます。ただし有機物の施用がなければ、土はだんだん痩せて生育が悪くなります。すると、収穫量や品質が低下していきます。
堆肥とつくり方と施し方
堆肥のつくり方
① 材料の落ち葉・枯れ草・わらなどは、手で握ったときに、水分がやっとしみ出るくらいのものを使用します。
② 市販のコンポスターなどを利用して、家庭用生ごみのリサイクルで堆肥を作る方法もあります。
堆肥の施し方
① 全面施用 :堆肥を圃場の全面に散布し、土と良く混ぜ込む方法です。
② 作条施用 :畑の畦の肩の部分に、条状に施肥する方法です。
主な市販堆肥の種類と特性
肥料に使われるのは、5大要素のうち、窒素、リン酸、カリの3要素になります。カルシウムとマグネシウムは、石灰質資材として、土の酸性度の調整に使われます。
5大要素の特長
窒素
窒素は、植物を大きく生長させる養分です。特に、葉を大きくするため、葉肥と言われます。
窒素が多すぎると、徒長して軟弱になり、病害虫に侵されやすくなります。窒素が足りないと発育が悪くなり、大きく育たず、収量が少なく、品質が悪くなります。
リン酸
リン酸は、花肥や実肥と言われ、開花や結実に不可欠の養分になります。
リン酸が多すぎると、鉄やマグネシウム、亜鉛を欠乏させます。リン酸が足りないと、発育不良から開花や結実の遅れ、子実の品質や収量の低下がみられます。
カリ(カリウム)
カリは、根の発育に関係するので、根肥と言われます。水溶性のため流れやすいため、少しずつ追肥することで、効果をあげます。
カリが不足すると、枯れ葉や落葉が早く見られ、病気にかかりやすくなります。
カルシウム(石灰)
カルシウムは、畑の土は徐々に酸性に傾きやすいので、土の酸度に応じて作付け前に混ぜるとよいです。土を中性に近い状態にしておくと、根張りがよく、土壌微生物の有益な菌を増やすことができます。
マグネシウム(苦土)
マグネシウムは、葉緑素の主成分です。不足すると、光合成のはたらきが悪くなります。
肥料の種類と特徴
単肥
単肥とは、窒素、リン酸、カリのどれか一つを含む肥料のこと。
配合肥料
配合肥料とは、窒素、リン酸、カリ原料を2成分以上混合した肥料のこと。
化成肥料
化成肥料とは、窒素、リン酸、カリ成分が、バランス良く含まれる粒状の肥料のこと。
※配合肥料と化成肥料は、「複合肥料」と呼ばれます。
有機肥料
有機肥料テャ、油かすが代表的。油かすには窒素だけでなく、リン酸、カリも含まれています。リン酸肥料として知られている骨粉にも、窒素が含まれています。油かすも骨粉も、それだけでは肥料成分が偏るので、他の肥料と配合し、成分のバランスをとるとよいです。
野菜の要素欠乏の症状について
キュウリ
キュウリの石灰不足は、葉の周縁が黄色くなります。苦土不足は、葉脈間が黄色くなります。肥料が多いと苦土の吸収が悪くなり、苦土不足が起こりやすくなります。低温によっても発生します。
トマト
トマトの石灰不足は葉縁部が黄色くなり、4段以降の果実に尻腐病が発生します。苦土不足は葉脈間が黄色くなります。石灰と苦土不足が起こりやすくなります。
ナス
ナスには苦土欠乏がよく見られ、葉脈間が黄化します。石灰欠乏は、葉縁の一部が黄色になります。苦土不足が起こりやすくなります。
コマツナ
コマツナのモリブデン不足は、葉がカップ状に内側に巻きます。
ネギ
ネギの窒素不足は、下葉の先から枯れはじめ、葉色が薄くなります。リン酸不足は、葉は濃緑で生育しなくなります。苦土不足は、下葉の苦土が若い葉に移行するため、外葉が黄色になります。
ブロッコリー
ブロッコリーの窒素不足は、下葉から黄色くなります。石灰不足は葉縁が黄変し、縁腐れになります。苦土不足は下葉の葉脈間が黄色くなります。
レタス
レタスの窒素不足は生育が悪くなり、若い葉は立性となります。カリ不足は葉縁の切れ込みが黄色くなります。石灰不足は葉の周縁部が褐変し、中心部が心腐れを起こします。
カブ
カブのカリ不足は、下葉の葉縁が黄色くなります。
ダイコン
ダイコンの石灰不足は、葉縁が黄色くなります。ホウ素不足は、サメ肌ダイコンや赤しん症が起こります。苦土不足が起こりやすくなります。
ニンジン
ニンジンの石灰不足は、根に丸い黒色斑点を発生します。
まとめ
良い土の条件とは、水はけが良く、水もちが良く、堆肥のような有機物を多く含んでいる土のことです。
土には色々なタイプの種類があります。
農業に適した土は、重くもなく、軽くもなく、その中間に当たる土になります。