谷川俊太郎さんの詩にはいくつか好きなものがあります。
「川の音楽」のアンダンテにはスタートアップの秘訣が溢れています。少なくとも私はこの詩に立ち返って考えることが多いです。
川の音楽 / 谷川俊太郎
私は橋の上に立っています
振り返ると川がどこからかやって来て
前を見ると川がどこか私の知らない里へ流れていく
川はアンダンテの音楽を隠しています
何十年か前にも麦藁帽子をかぶって
橋の上から足の下の川の流れを眺めていた
川が水源から海まで流れていくことをその頃は知っていた
でも今はそんな知識はどうでもいいのです
川が秘めている聞こえない音楽を聞いていると
生まれる前から死んだ後までの私が
自分を忘れながら今の私を見つめていると思う
夕暮れの光にキラキラ輝きながら
川はいつまでもどこまでも流れていきます
笹舟のような私の思いをのせて
人との出会いが財産であり、ご縁をどこまで育めるかどうか。この人と何かできるんじゃないか、誰に何も言われなくてもできそうな確かな“予感”を感じることがお金より何よりも大切です。
自分の中のアンダンテを聞くことで、誰かのアンダンテも聞くことができる。ビジネス上手であるスキルよりも高めておきたいことだと思っています。
いいときはいいもの、よくなくてもいいことへ向かっていける気持ちやモチベーションにできるものを持っているかどうか、毎日のスタートアップを生業にする、そしてあり続ける時には重要な要素です。
穏やかな川にも激しさがあり
濁っていても清らかなものがあり
全てはいつも流れているもの
空気はいつも美しく
空はいつも大きいもの
何事にも秘めたるアンダンテが常にあることを思い知らせてくれます。わたしはしっかりアンダンテが聞けているだろうか、感じられるかどうか、少しワクワクに似たような気持ちの疼きを大切にしています。
なんだか違うなと思っても、まずは流れに身を任せようと思うことも時には必要な時間です。
雄大な川のようにアンダンテがいつも届けられているだろうか。
文・撮影/Chikayo Kono Modrušan
@croacica