うつくしい物語はやってくるもの

うつくしい物語はやってくるもの

スタートアップを決めたときに誓いました。

生まれ故郷の京都「千年の都」その伝統や美しさに

着想を得た仕事ができるようにと想いを込めました。

本当ならば理念やミッションのような大きなものが

相応しいのかもしれませんが

自分とだけの約束ごとのようなものでした。

「わたし」らしいことを

選んでもらえるように

いつか、線となっていくように

スタートアップして7年目の夏、

導かれるように訪れた場所がありました。

何度も訪れた場所なのに

今まで辿り着けなかった場所、

福井県越前市大滝町

harukamiの作られるところです。

手漉き和紙を包んでできた小箱は

まるで平面から立体に纏う着物のようで

絶妙な隙間をもってしっかり密着していること、

その端っこがずっと大好きでした。

毎日開ける時に手をかけるところが特別なのです。

偶然に見ることができたのは

まだ濡れている商品と

これから包まれる和紙でした

その姿がとても美しかったのです。

小さい頃に、曽祖母のちぎり絵のお手伝いをしていたことを

思い出しました。

ちぎった和紙を選んで貼ってくれた時の嬉しかったことを。

和紙の端っこの美しさを教えられたのは、

あの頃だったに違いありません。

これも線だったのだと知らせてくれました。

好きを仕事にすることは時間も情熱も無駄なのではないかと

思うことがたくさんあります。

迷いながら、それでも信じて進むしかありません。

でも、好きが仕事になっていることを実感した時には

強さが滲み出てくれるような

素晴らしい人やものとの出会いがあります。

毎日の仕事は速さでも大きさでもなく

丁寧に両手で包まれ、寄り添う仕事が

永遠の美しさとなるのだと信じています。

自分との約束に一歩、近づけた夏のものがたり。

 

やなせ和紙

https://harukami.net

文・撮影/Chikayo Kono Modrušan

@croacica