旅はすべて幸せか?(Travelogue 5)

(Travelogue 5)

ところで、旅というのはすべて幸せなことなのか、という問いには、そうではない、と言えるのも事実です。

2015年にドイツで遭遇したシリアの難民の姿は、とても衝撃でした。

民衆が立ち上がり、自由を求めて国に対して起こした戦争。それに対して、国家は軍を擁して弾圧、迫害が始まりました。

その難を逃れるために、シリアの人たちはトルコを抜け、命からがらドイツに辿り着いたのです。

ドイツまで歩けば自由が待っている、と信じて。

ところが、そのドイツでは難民の受け入れに寛容とはいえ限界があります。ビザの発給がなければ難民の入国は許されませんでした。
(最終的に、80万人強のシリア難民を受け入れた)

また、難民を受け入れたことにより、ドイツ国内の治安悪化がすすみました。ドイツ国民からも不満の声が上がりはじめました。そうなると、ビザの発給ペースがますます遅くなります。

いつドイツに入国できるかわからない日を、小雨降るバイエルンの寒空の下で待たなければならない家族。それでも戦火にいるよりも命の安全は担保されるため、次々と難民が押し寄せてくるのでした。

旅先でそういう筆舌に尽くしがたいシーンを目の当たりにすると、決して安易に旅は最高などとは言えません。

しかしながらひとつ言えることは、いかなる場面からでも人に興味をもてるというのは、旅のもつ力なのだと思うのです。